＃ パスタ

独りの時、茹でたパスタに和えるだけの、パスタの素みたいなものをよく買ってきて、食べていた。
節約とダイエットを兼ねて。
今日、キッチンの奥に眠ってたそのパスタの素で久々にパスタを作って、食べてみた。
独りだった時の事思い出した。

会社の補助を受けて、格安で住める独身寮を出て、敢えて一人暮らしを始めた。
会社の人間と、帰ってまで顔をつき合わすのがイヤだった。
当時付き合ってた彼女と、もっと一緒に居れる時間が欲しかった。
理由はそんな所だったけど、金銭的に不自由になっても、決して悔いはしないと思ってた。

金は無かったけど、彼女には欲しいもの買ってあげたくて、生活をとことん削った。
夜はパスタ、昼はパンを2個食べて過ごした。
飲みの誘いはほとんど断って、皆で同じ現場に行っても一人で昼食をとりに行ったりして、会社の人間に不思議がられた。心配された。

今にして思えば、彼女とずっと一緒に居たいからっと言って、そんな生活してたんじゃ結婚する金も貯められない。
ずっと一緒に居て、その先はどうするつもりだったんだろう。何も考えてなかった。
いや、考える事から逃げていたのかも知れない。
結局その時の彼女とは別れた。

その後は、昼食は皆と一緒に、同じものを食べるようにした。
まともに飯を食う事がどれだけ体調に影響を与えるかを思い知った。
でも、夜のパスタはやめなかった。
彼女が居なくなっても、節約しなきゃいけない事に変わりなかった。
体型も維持したかったし。

悔いはないつもりだった。
その生活をしてる時も、「俺は間違った事してない」って思ってた。

今は妻が火の通ったまともな料理を毎晩出してくれる。
だから久々にその時の生活を思い出した。
今になって、その時の事を少し悔いてる自分が居て。
「俺は間違った事してない」って、自分に言い聞かせてただけかも、と思った。

決して不味くなかったけど、あの頃何度も何度も食べたパスタの味が、そんな事思わせた。

＃ 継続

「自分の好きな事を仕事にできる人間なんて、そうそう居るもんじゃない」

「仕事は仕事と割り切って、好きな事は趣味としてプライベートで楽しめばいい」

父親のそんな言葉に同調して、好きでもなんでもない会社に入った。

「好きな事」は、まだ見つかっていない。

逃げただけかもな。
先の見えない未来の事を考える事から。

「未来の自分が、きっと何か見つける」
そうやって未来の自分に押し付けて、考える事から逃げたんだ。

今でもそれが続いてる。

＃ (no subject)

「ごめんなさい」や、
「ありがとう」が、
素直に言えない大人になりたくありません。

＃ うさぎ

二兎を追う者一兎も得ず

でも必ず二羽で現れるんだよね、ヤツらは。
一羽しかいないなら、迷う事はないと思う。



…はぁ。
どっちも旨そうだ。

＃ 一人一気

翌日の早起きに備えて、早めに床についた。
眠れぬまま一時間後に起き出して、酒を飲んだ。
最後の方は、決して旨い酒とは言えなかった。
ただただ早く眠る為に、急いで飲んだから。



今、気になってる人が好きだと言う歌を聴きながら、
自分の昔の恋を思い出してる。
なんてバカなんだ。
今始まりかけてる人より、昔の恋に胸焦がして。




一気飲みした酒が回ってきた。
もうすぐ意識を失う。
今宵生じたこの迷いも、共に消えていく事を望む。